
平成28年6月1日に「民法改正の一部を改正する法律」が成立しました。
それによって、
女性の再婚禁止期間が前婚の解消又は取消しの日から起算して100日に短縮。
再婚禁止期間内であっても再婚することができる場合。
についても明らかにされ、平成28年6月7日に公布・施行されました。
そこで今回は、
そもそも、どうして女性にだけ再禁止期間が定められているのか?
なぜ改正民法6カ月から100日に短縮されたのか?
再婚禁止期間中における再婚の「認定」はどのように改正されたのか?
などのことについて考えてみたいと思います。
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このページの目次
そもそも、なぜ女性にだけ再婚禁止期間があるのでしょうか?
女性に再婚禁止期間がある理由についてまとめておきましょう。これは、生まれた子どもの「父親が誰になるのか?」に関係してきます。
イ) 子の扶養義務を負う父親を決める民法の「嫡出推定」との関わり
この嫡出推定といいますのは、
「生まれた子の父親が誰かをとりあえず決める」
ということなのです。
これは、
「扶養義務を負う父親を早期に決定して、親子関係を安定させることが子の利益につながる」
という考え方に基づいているものになります。
ロ) 「嫡出推定」には次のようなルールがある
先程の嫡出推定するためのルールもまとめてみましょう。
ⅰ)婚姻中に妻が妊娠した場合は夫の子であると推定される(反証により覆る)
ⅱ)離婚した日から300日以内に生まれた子は「離婚した夫」の子と推定される。
ⅲ)再婚した日から200日以内に生まれた子は「再婚した夫」の子と推定される。
ハ) 前夫と現夫の両方が父親?のパターンが出てくる
「嫡出推定の重複」を防ぐという狙いがあります。
たとえば、女性が離婚した直後に再婚し、200日を経過した時点で子が生まれたというケースでは、
生まれてきた子は、先程の(ⅱ)と(ⅲ)の両方に当てはまります。
そうしますと生まれてきた子は、
「離婚した前夫」と「再婚した現夫」の両方が父親であると推定されてしまうことになります。
以上のように「嫡出推定の重複」を防ぐために、女性に対して再婚禁止期間が設けられたのです。
しかしなぜ「6カ月」?その合理性に対する批判が続出
再禁止期間の6カ月に対する批判の経緯もご紹介しておきましょう。イ) 妊娠したかどうか「外見」からわかる期間として明治時代に制定
医療・科学が未発達であった民法制定当時(明治時代)においては、
再婚の段階で妊娠しているかどうかを「外見」から判断することができるためには、
「6カ月(約180日)」は必要であると考えたからだと言われています。
これに対して、改正前の民法772条が定める嫡出推定の重複を回避するためならば、
再婚禁止期間は100日で十分であるはずだとの批判がありました。
ロ) 離婚・再婚の増加、鑑定技術の発達もあり「6カ月」は時代錯誤との批判も
再婚禁止期間のうち100日を超える部分については、家制度が支配的であった明治民法の規定をそのまま踏襲しているものとなります。
DNA鑑定など科学的な親子関係鑑定技術や医療が進歩した現在では、時代錯誤として見直しが迫られていました。
最高裁判決を受けて、法改正へ!

法改正へ向けての裁判の経緯もご参考になさってください。
イ) 岡山の女性が「再婚が遅れて精神的苦痛を受けた」として国を提訴
岡内の30代の女性が2011年に、
「6カ月間の再婚禁止期間があるために再婚が遅れて精神的苦痛を受けた」として国に165万円の支払を求めて提訴しています。
1・2審で敗訴した女性ですが、前夫の家庭内暴力(DV)が原因で離婚しています。
当時前夫との間に子を妊娠していたが、離婚後6カ月間、再婚をまたざるを得なかったのです。
ロ) 最高裁が「100日を超える部分は違憲である」と初めての判断を下した(2015年12月16日)
最高裁において、15人の裁判官全員が違憲と判断したのです。
しかしながら、国家賠償については、原告が離婚した2008年当時、
「国会は違憲性を明白に認識していたとは言えない」としてその請求を退けています。
再婚禁止期間中における再婚の「認定」など今後どのようになる?
今後の再婚禁止期間中の認定はどのようになっていくのかを認識しておきましょう。イ) 現行法でも「妊娠の可能性がない場合」の再婚はすでに認められている
法務省はこれまでも、
また、今回の法改正に目を向けますと、
1) 離婚時に妊娠していなかった。
2)離婚後に出産した場合。
これらの場合ですと、すぐに再婚できるとしています。
ただ、この例外適用のためには、原則として医師作成の証明書を提出する必要があります。
そいて、先程の2015年12月の「再婚禁止期間訴訟」の「違憲判決」以降は、
離婚後100日を過ぎたた場合の再婚を認めており、各地方公共団体では、事実上この判決に沿った運用ががすでに進められています。
ロ) ただし妊娠能力がある一定程度の再婚禁止期間は必要です
最新医療水準をもってしても、受精と同時に妊娠判定することができる技術はありません。
つまり、妊娠能力のある女性の場合は、改正民法のもとにおいても、再婚禁止期間がゼロになることはありません。
妊娠能力のある女性が、
「離婚時に妊娠していなかった」
とする確定的な診断及び認定を得るためには、事実上数週間を経過していなければなりません。
まとめとして
前述しました「再婚禁止期間訴訟」において最高裁は、100日間の再婚禁止期間については、
「父子関係を早く確定して、子の法的身分を安定させることは重要であり合憲である。」
と判示しました。
しかし、婚姻関係の破綻と実際に離婚が成立する時期がずれることもあります。
その間に別の男性との間に子が生まれたとしても、
民法772条の嫡出推定規定があるために「前夫の子」とされてしまうことを避けるために、出生届を出せないケースが増えています。
これに対してある有識者は、
現行法では、再婚禁止期間に違反して父の推定が重なったときは、裁判手続きで父を決める。
その場合はー「父未定」ーとして母親が出生届を出す。
もし再婚禁止期間が廃止された場合は、これらの規定をすることによって無戸籍を防ぐことができる。
その後DNA鑑定などで父親を決めればよい。
という意見もあります。
また別の専門家の意見として、
嫡出推定規定は絶対的社会弱者である子供を守るための制度と位置づけられる。
場合によっては血縁関係がなくても、子供の両親を速やかに確定させることで家族が安定し、子供の健全な養育が可能となる。
またDNA鑑定などは、場合によってはこれまで築いてきた家族関係を壊しかねないので、慎重に運用すべきである。
という意見もあります。
無国籍者となれば住民票の作成やパスポートの発給、国家資格の取得などが困難となります。
つまり、日常生活に支障を来すことにもなりますで、子の問題に対する根本的な解決が早急に望まれます。